パテック フィリップのノーチラスは、正規店で定価のまま買うのがいちばん難しい腕時計のひとつです。ただ、道がふさがっているわけではありません。
現行でいちばん定価が低いのは7118/1A-001の5,840,000円、いちばん高い永久カレンダーの5740/1G-001が28,980,000円です(パテック フィリップ公式サイトの表示価格・2026年9月20日確認)。
この金額で買えるかどうかを分けているのは、運ではなく生産数と配分の構造なんです。
買えない理由を数字で押さえたうえで、現行の定価一覧、手に入れる3つのルート、転売対策の実際、中古で見るべき書類、そして50周年記念モデルまでを順に並べました。
- 現行ノーチラス12モデルの公式サイト表示価格(2026年9月20日に1点ずつ確認)
- 正規店で買えない理由を、生産数・廃番・相場・記念年の4つに分けて確認
- 国内正規店・海外正規店・並行輸入や中古という3ルートの支払総額とリスク
- 「転売するとバレる」の中身は、公式の公表事項と業界慣行のどちらなのか
先に結論から。定価で買う道はありますが、長期戦になります。
ノーチラスが正規店で買えない構造的な理由

ノーチラスが買えないのは、人気だからという一言で片づく話ではありません。年間生産数・廃番・相場・記念年という4つの要因が重なった結果です。
- 年産は推計で約7万2000本。全コレクションで分け合う
- ステンレス5711/1A-010が2021年に廃番になった
- 中古相場が前年比で約40%上がっている(2026年7月時点)
- 2026年は50周年で、コレクション全体に関心が集まっている
ブランド全体としての購入難易度はパテック フィリップが正規店で買えない理由で扱っているので、ここではノーチラス固有の事情に絞りますね。
理由1:年産約7万2000本という母数の小ささ
パテック フィリップは生産数を公式発表していません。モルガン・スタンレーとLuxeConsultの推計によると、2025年の年間生産数は約7万2000本とされています。
これは推計値です。公式発表ではない、という前置きつきで読む数字ですね。
そしてこの本数を、ノーチラス、アクアノート、カラトラバ、グランドコンプリケーションなど全コレクションで分け合います。
さらに世界各国の正規販売店へ配られます。1店舗に届くノーチラスは年間でごく僅かなんです。
需要が増えても増産しない方針を長く守っていることが、この構造を固定化させています。待つ人が増えるほど、1人あたりの確率は下がるわけですね。
理由2:5711の廃番が決定づけた希少性
入手難易度を決定的に押し上げたのが、ステンレスモデル5711/1A-010の廃番でした。
2021年1月に社長のティエリー・スターンが廃番を表明し、最終仕様のオリーブグリーンダイヤル5711/1A-014が2021年4月から2022年初頭まで生産されてシリーズは終わっています。
別枠で、ティファニーブルーダイヤルの特別版が170本だけ作られました。
実用的なステンレスモデルは終了しましたが、プラチナの宝飾版である5711/110P-001から5711/113P-001までの4本は、2026年9月20日に確認した時点でも公式カタログに残っていました。公式サイトの表示価格は41,700,000円から70,480,000円でした。
つまり5711という型番そのものが消えたわけではなく、消えたのは、いちばん手が届きやすかった実用的なステンレスのほうだったんですね。そこが誤解の元です。
理由3:中古相場が前年比40%上昇している
2026年7月時点で、ノーチラス全体の中古相場は平均約2,568万円でした。同じ時点の前年比で約40.1%、金額にして約736万円の上昇です。
6か月前と比べても47.5%上がっています(同じく2026年7月時点)。
円安が海外からの需要と重なって国内相場を押し上げ、その値上がりが投資目的の買い手を呼び、その買い手がまた正規店の予約枠を圧迫します。
この循環が続いています。相場が落ち着くまで待とうという作戦は、当てが外れやすいんですね。
理由4:2026年は50周年で需要がさらに集中している
2026年はノーチラス誕生から50周年にあたる年で、同年4月のウォッチズ&ワンダーズでは記念モデルが正式に発表されています。
記念モデルの中身は記事後半の50周年の章でまとめていますが、買いやすさという点では完全に逆風です。
限定枠に既存顧客の関心が集まると、通常モデルの配分にも影響が出るのは避けられません。
いま新規で並び始める方は、いちばん混んでいる時期に入ったと考えておくほうが現実的です。覚悟は要りますね。
次に、その定価が実際いくらなのかを1モデルずつ確認します。
現行ノーチラスの定価一覧【2026年9月時点】
現行ノーチラスの公式サイト表示価格は、宝飾仕様を除くと5,840,000円から28,980,000円の範囲にあります。
幅は約5倍です。下の表は、2026年9月20日にパテック フィリップ公式サイトの日本向け表示で1点ずつ確認した金額になります。
| 型番 | 素材・径 | 主な機能 | 公式サイト表示価格 |
|---|---|---|---|
| 7118/1A-001 | ステンレス 35.2mm | 日付・センターセコンド | 5,840,000円 |
| 7118/1A-011 | ステンレス 35.2mm | 日付・センターセコンド(グレー文字盤) | 5,840,000円 |
| 5726A-001 | ステンレス 40.5mm | 年次カレンダー(革ストラップ) | 9,280,000円 |
| 5726/1A-014 | ステンレス 40.5mm | 年次カレンダー(ブレスレット) | 10,220,000円 |
| 7118/1R-001 | ローズゴールド 35.2mm | 日付・センターセコンド | 11,110,000円 |
| 7118/1200R-001 | ローズゴールド 35.2mm | ベゼルダイヤ | 12,480,000円 |
| 5990/1A-011 | ステンレス 40.5mm | フライバッククロノ+トラベルタイム | 12,520,000円 |
| 5811/1G-001 | ホワイトゴールド 41mm | 日付・センターセコンド | 13,350,000円 |
| 5980/60G-001 | ホワイトゴールド 40.5mm | フライバッククロノ | 14,610,000円 |
| 5712/1R-001 | ローズゴールド 40mm | ムーンフェイズ・パワーリザーブ | 15,890,000円 |
| 5990/1R-001 | ローズゴールド 40.5mm | フライバッククロノ+トラベルタイム | 22,690,000円 |
| 5740/1G-001 | ホワイトゴールド 40mm | 永久カレンダー | 28,980,000円 |
公式のノーチラス一覧には、この12本を含めて合計44のリファレンスが並んでいます(2026年9月20日確認)。
差が開くのは宝飾仕様のほうです。ダイヤを敷き詰めた5990/1423G-001は439,820,000円で、いちばん低い7118/1A-001の約75倍でした(2026年9月20日確認)。
公式サイトのノーチラスのトップページに並ぶのは、その時に選ばれた数点だけです。ここに出ていない型番を「廃番になった」と書いている記事がありますが、全リファレンスは一覧ページ側にあり、紳士用と婦人用でタブが分かれています。5990/1A-011も5726A-001も、2026年9月20日時点で現行として掲載されていました。
定価がいちばん低いノーチラスは7118/1A-001
最も定価が低いのは、ステンレス35.2mmの7118/1A-001と7118/1A-011。公式サイト表示価格はどちらも5,840,000円です(2026年9月20日確認)。
文字盤の色だけが違い、金額は同じでした。
- 7118/1A-001:ブルー文字盤・5,840,000円(2026年9月20日確認)
- 7118/1A-011:グレー文字盤・5,840,000円(同上)
- どちらも公式サイトの分類は「婦人用」・ケース径35.2mm
ひとつ注意したいのが、7118系を公式が婦人用として位置づけている点なんです。公式サイトの日本語表示でも「婦人用」に分類され、英語ページの説明文も ladies’ と書かれています。
35.2mmというサイズからユニセックスとして紹介されることがありますが、公式の分類はそうなっていません。
小さめのケースが好みだという方は、ここが入口として現実的な選択肢になります。逆に41mmクラスを想定しているなら、実質的な下限は5811/1G-001の13,350,000円まで上がると考えてくださいね。
主要モデルのスペック比較
同じノーチラスでも、ケース径は35.2mmから41mm、厚さは8.2mmから12.53mmまで開きます。同じ名前でも中身は別物です。下の数値はすべて公式サイトの技術仕様欄からの引き写しになります(2026年9月20日確認)。
| 型番 | 径 | 厚さ | キャリバー | 主な機能 |
|---|---|---|---|---|
| 7118/1A-001 | 35.2mm | 8.62mm | 26-330 S C | 日付・センターセコンド |
| 5811/1G-001 | 41mm | 8.2mm | 26-330 S C | 日付・センターセコンド |
| 5740/1G-001 | 40mm | 8.42mm | 240 Q | 永久カレンダー・ムーンフェイズ |
| 5712/1R-001 | 40mm | 8.52mm | 240 PS IRM C LU | ムーンフェイズ/パワーリザーブ/スモールセコンド/ポインターデイト |
| 5726A-001 | 40.5mm | 11.3mm | 26-330 S QA LU 24H | 年次カレンダー/ムーンフェイズ/24時間表示 |
| 5980/60G-001 | 40.5mm | 12.2mm | CH 28-520 C | フライバッククロノグラフ |
| 5990/1A-011 | 40.5mm | 12.53mm | CH 28-520 C FUS | フライバッククロノ/デュアルタイム/両タイムゾーン昼夜表示 |
補足を少しだけ。5712/1R-001の日付は針で示すポインターデイトで、窓表示ではありません。
5990/1A-011はホームタイムをスケルトン針、ローカルタイムを無垢針で示し、9時側にタイムゾーン操作用のプッシャーを備えます。厚さ12.53mmは現行で最厚です(2026年9月20日確認)。
5811/1G-001の定価は2年で26%上昇した
現行ノーチラスの中心にある5811/1G-001は、2024年3月から2026年9月までの約2年間で定価が約278万円、率にして約26%上がりました。
| 時点 | 定価 |
|---|---|
| 2024年3月 | 10,570,000円 |
| 2024年4月 | 11,100,000円 |
| 2024年9月 | 11,440,000円 |
| 2025年4月 | 11,770,000円 |
| 2026年9月20日(公式サイト表示) | 13,350,000円 |
公式サイトの表示価格で見ると、とくに2025年4月以降の上げ幅が大きく、約13.4%の引き上げでした。
つまり待てば買えるかもしれないが、待つほど定価そのものが上がるという状況です。ノーチラスに限らず、パテック フィリップ全体で共通する傾向ですね。
定価と中古相場の倍率
2026年7月時点の中古相場を定価と突き合わせると、現行の5811/1G-001で約2.2倍、廃番の5711/1A-010で約5.9倍でした。
| モデル | 中古相場(2026年7月時点) | 定価に対する倍率 |
|---|---|---|
| 5811/1G-001 | 平均 約2,970万円 | 約2.2倍 |
| 5711/1A-010(廃番) | 平均 約2,284万円 | 約5.9倍 |
廃番の5711/1A-010は、2021年1月時点の定価3,872,000円に対して約5.9倍という水準です。
「定価比300%のプレミア」という表現をときどき見かけますが、実際の倍率はそれを大きく超えています。
現行の5811/1G-001も中古在庫はほぼ無く、市場に出てくるのは年4本程度で、いずれも売り切れているのが実態でした(2026年7月時点)。
続いて、この金額を実際に払って手に入れるためのルートを並べます。
ノーチラスを手に入れる3つのルート
ノーチラスの入手経路は、国内の正規店、海外の正規店、並行輸入や中古という3つに整理できます。
どれを選ぶかは「時間を払うか、金額を払うか」の選択に近い話です。どちらも払わずに済む抜け道はありません。
ルート1:正規店で購入実績を作る
定価で買うなら、まず正規店との取引実績を作るところからです。ノーチラスをいきなり案内される可能性はほぼありません。
現実的な出発点は、比較的入手しやすいモデルでの購入です。その筆頭がカラトラバで、公式サイト表示価格は6,110,000円からとノーチラスより大幅に低い水準でした(2026年9月20日確認)。
しかもカラトラバは中古相場が定価を下回る定価割れで、ノーチラスとは相場構造が正反対なんです。ここが面白いところですね。
購入履歴をどう評価するかについて、パテック フィリップも各正規販売店も公式には一切公表していません(2026年9月20日確認)。「購入希望書の提出が必須」「アンケート記入が必要」といった手続きを断定的に書いている情報もありますが、信頼できる出典で裏付けられたものではなく、運用は店舗ごとに違います。
店頭での振る舞いを具体的に知りたい方は門前払いを回避して在庫を出してもらうコツをどうぞ。
百貨店の外商経由を考えている方はパテック フィリップの外商ルート攻略法、実際に案内されているのがどんな人なのかはノーチラスを定価で買えている人の共通点にまとめてあります。
ルート2:海外の正規店という選択肢
海外の正規店で買うという発想は、「日本で買えないから海外で」という形では成立しにくいというのが出発点になります。
配分の考え方は国が変わっても大きくは変わりません。初訪問の旅行者に希少なモデルが回る前提で動くのは、少し無理がありますよね。
そのうえで、公式が用意しているものは確認できます。パテック フィリップは正規販売店の検索ページを国別に公開しており、渡航先の正規店を事前に調べられます(2026年9月20日確認)。
また公式のよくある質問には、製品はすべて自社の販売ネットワークのみを通じて取り扱われると明記されています。
- 正規販売店は公式サイトの検索ページから国別に調べられる(2026年9月20日確認)
- 公式は「製品はすべて自社の販売ネットワークのみを通じて取り扱う」と明記
- 配分の方針は、国を問わず公表されていない
価格についても公式の記載があります。「特定の国にお住まいのお客様には現地通貨での価格が表示されます」「価格は予告なく変更されることがあります」という2点です。
国ごとに現地通貨の希望小売価格が設定されている以上、為替と改定のタイミングで差は動きます。だからこそ、いくら安くなるという断定はできません。
- 免税枠は「その他の品目」で海外市価の合計20万円まで。1個で20万円を超える品物は、その全額が課税対象になります
- 課税価格は海外の小売価格に0.6を掛けた額。円貨換算は定められた公示レートで行われます
- 腕時計は関税が無税の品目なので、課税価格に対して消費税・地方消費税の合計10%だけがかかります
- 税関が示す計算例では、海外市価15万円の腕時計1個で消費税・地方消費税は8,900円でした
出典は税関の海外旅行者の免税範囲と税額の計算方法で、いずれも2026年9月20日に確認しました。
税関が示すこの計算方法にあてはめると、実質的には現地での購入額の約6%が税として乗ります。
渡航費と滞在費は別にかかりますから、そこまで含めて比べてくださいね。
ルート3:並行輸入店・中古で買う
三つめが、並行輸入店や中古販売店で買う道です。在庫さえあれば待たずに手に入ります。時間を金で買う形ですね。
代わりに、支払いは定価の約2.2倍から5.9倍になります(2026年7月時点の中古相場から算出)。
ここで押さえておきたいのが、公式のよくある質問にある一文なんです。
- 公式の記載:「製品はすべて当社の販売ネットワークのみを通じて取り扱われている」(2026年9月20日確認)
つまり並行輸入品や中古は、公式の販売ネットワークの外にある流通になります。違法という意味ではありませんが、買った店の保証がどこまでのものかは、契約内容を自分で確かめるしかありません。
値段より先に見るべき書類まわりの確認は、この記事の後半にまとめました。そちらを先に読んでからでも遅くありませんよ。
3ルートの比較
3つを同じ物差しで並べると、選ぶ基準がはっきりします。期間の欄に年数を書いていないのは、公表された待機期間がそもそも存在しないからです。
| 国内の正規店 | 海外の正規店 | 並行輸入・中古 | |
|---|---|---|---|
| 入手までの期間 | 長期(公表された待機期間なし) | 長期(同左) | 在庫があれば即時 |
| 支払総額 | 定価 | 現地定価+渡航費+税 | 定価の約2.2〜5.9倍 |
| 保証書 | 新品として付属 | 新品として付属 | 個体による(再発行不可) |
| 主なリスク | 案内が来ない | 案内が来ない・為替・課税 | 価格・真贋・研磨の状態 |
| 向いている人 | 時間をかけられる人 | 渡航の予定がある人 | 今すぐ着けたい人 |
定価にこだわる方はルート1か2、時間を優先する方はルート3。定価で買う道はあるが長期戦になるという一点が、この記事の結論です。
転売対策と保証書|「バレる」と言われる仕組み
「ノーチラスを転売するとバレる」という話の中身は、公式が制度として公表しているものと、業界の慣行として語られているものが混ざっています。
この2つを分けて見ると、何が確かで何が確かでないかがはっきりしますよ。
| 論点 | 公式が公表していること | 公表されていないこと |
|---|---|---|
| 保証書 | Certificate of Origin は複製も再発行もしない | 販売店が保証書を預かる期間や条件 |
| 個体の識別 | ムーブメント番号とケース番号で個体を識別する | 販売記録をどこまで共有しているか |
| ケースバック | 取り外しは正規販売店と正規サービスセンターでのみ対応 | — |
| 購入制限 | — | 同一モデルの購入本数に関する統一ルール |
| 再販価格 | 再販価格の問い合わせには回答しない | — |
公式が明言しているのは2点です。保証書は再発行しないということと、ケースバックを開けられるのは正規の窓口だけということ。
どちらも公式のよくある質問に書かれています(2026年9月20日確認)。
一方で、保証書の預かり期間や同一モデルの購入制限については、公式の公表がありません。
そうした運用を行う店舗があるのは事実です。ただし統一ルールとして公表されているものではないので、条件は購入前に店舗へ直接確認してくださいね。
多くの場合、二次流通に出た個体を書類と番号から追えるという業界慣行を指しています。公表された制度の話ではありません。番号で個体が識別できること自体は公式が説明していますが、販売記録をどこまで共有しているかは公表されていません(2026年9月20日確認)。
線引きはここです。公式が言っているのは識別できるところまでで、その先の運用は表に出ていません。
なお公式は、自社の時計の再販価格を尋ねられても回答しない方針を明記しています。相場の判断はオークションハウスや専門業者に聞いてほしい、という立場ですね。
次は、ノーチラス以外にも目を向けた場合の選択肢を見ます。
アクアノートという現実的な選択肢
ノーチラスにこだわらないなら、同じスポーツラインのアクアノートが現実的な代替になります。
ステンレスの5167A-001は公式サイト表示価格4,440,000円で、ノーチラスの現行ステンレスモデルより取得しやすい価格帯です(2026年9月20日確認)。
| ノーチラス 5811/1G-001 | アクアノート 5167A-001 | |
|---|---|---|
| 定価 | 13,350,000円 | 4,440,000円 |
| 中古相場の倍率 | 約2.2倍 | 約3.1倍 |
| 流通量の目安 | 年4本程度 | 月3本程度 |
ただしアクアノートも中古相場は平均約1,363万円と定価の約3.1倍で、前年比では約32%上がっています(2026年7月時点)。
決して買いやすくはありません。そこは押さえておいてくださいね。
直近では小幅な調整局面に入り、月3本程度が取引されていました。ノーチラスより流通量がある分、二次流通での入手可能性は高めですね。
そのうえで中古を選ぶなら、値段の前に確かめる書類があります。
中古でノーチラスを買うときに確認すべきこと

中古のノーチラスで最初に見るのは値段ではなく書類と個体の状態です。ここを飛ばすと、あとから取り返しがつきません。ここは譲れないところですね。
以下はすべて、パテック フィリップ公式が明示している事項に基づいています(2026年9月20日確認)。
保証書(Certificate of Origin)は再発行できない
新品購入時に付属する保証書「Certificate of Origin」には、ムーブメント番号とケース番号とリファレンス番号が記載されています。
公式は、この書類の原本は保証書を兼ねており複製も再発行も一切しないと明記しています。
つまり書類の無い個体を買ってしまった場合、その欠落を後から埋める手段は存在しないということになります。
売却時の評価にも直結するので、中古では付属品の有無を最優先で確認することになりますね。
アーカイブ抜粋は「真贋証明書」ではない
パテック フィリップには「アーカイブ抜粋(Extract from the Archives)」という制度があり、1839年から残る自社記録から、その個体に関する情報を転記して発行します。
注文の条件は公式ページに明記されています(2026年9月20日確認)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 初回販売日から10年以上経過した個体のみ |
| 頻度 | 同じ個体につき12か月に1回まで |
| 費用 | 500スイスフラン(発行できない場合は全額返金) |
| 提出物 | 時計の写真(修理保証期間内なら修理請求書の写しでも可) |
| 位置づけ | アーカイブに所蔵される「部分的な記録」 |
誤解されやすいのですが、公式はこれを真贋証明とは位置づけていません。公式の言葉では、アーカイブに所蔵される特定の時計に関する「部分的な記録」です。
「アーカイブ抜粋があるから本物」という説明は、公式の位置づけを超えています。そこは要注意です。
また5811のような現行モデルは初回販売から10年を経ていないため、そもそも発行対象外になります。
ケースバックは自分で開けない
ムーブメント番号を見るにはケースバックを外す必要があります。
ところが公式は、腕時計も懐中時計も、ケースバックの取り外しは正規販売店または正規サービスセンターでのみ対応が可能と説明しています(2026年9月20日確認)。
真贋確認は正規チャンネルに一本化されているので、個人で開けるのは避けてくださいね。
研磨とブレスレットの状態
ノーチラスはヘアライン仕上げと鏡面仕上げが極めて近い位置で隣り合う構造なので、過度な研磨で稜線が丸まり、造形が崩れやすいとされています。
未研磨の個体が研磨済みより高く評価される傾向も、業界では一般的に言われている話ですね。
一体型ブレスレットも、経年で伸びが出ることがあります。ヴィンテージの3700などでは特に注意が要ります。
ただしこの手の下落率を数字で挙げている情報源は、販売業者や買取業者のものが中心です。数字を鵜呑みにせず、現物を見るか、信頼できる販売店に相談してみてください。
次は、2026年に発表された50周年記念モデルの中身です。
【2026年】ノーチラス50周年記念モデル

ノーチラス50周年記念モデルは噂や予想ではなく、すでに正式発表された実在のモデルです。ここからは、その4点を価格と限定本数で確認します。
公式の発表によると、2026年4月のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで腕時計3型とデスククロック1型が公開されています。
記念モデル4点のラインナップと価格
4点はすべて限定生産で、腕時計3型の合計が5,000本、デスククロックが100本です。金額と限定本数は公式の各モデルページで確認できます。
| 型番 | 素材・仕様 | 限定本数 | 公式サイト表示価格 |
|---|---|---|---|
| 5810/1G-001 | ホワイトゴールド 41mm・ブレスレット・厚さ6.9mm | 2,000本 | 15,260,000円 |
| 5810G-001 | ホワイトゴールド 41mm・ストラップ・バゲットダイヤ0.39ct | 1,000本 | 12,210,000円 |
| 5610/1P-001 | プラチナ 38mm・ブレスレット・9時位置にダイヤ1石 | 2,000本 | 18,320,000円 |
| 958G-001 | ホワイトゴールド 50.65mm・デスククロック | 100本 | 41,720,000円 |
限定本数については注意が要ります。ここは間違いが多いところです。英語圏の記事には5810/1G-001を1,000本、5610/1P-001を2,000本と取り違えて紹介しているものが流通していますが、公式の各モデルページの記載は上の表のとおりでした。
秒針も日付もない——初代3700への回帰
記念モデル3型に共通する最大の特徴は、センターセコンドと日付表示を持たない構成です。
現行の5811/1G-001は公式の仕様欄に「日付・センターセコンド」と明記されていますが、5810/1G-001の仕様欄にはどちらの記載もありません(2026年9月20日確認)。
これは1976年の初代Ref.3700/1Aが持っていたシンプルな構成へ立ち返る意図によるもので、意匠だけの復刻ではありません。
ケース厚はいずれも6.9mmで、5811の8.2mmよりはっきり薄く仕上がっています(公式の技術仕様・2026年9月20日確認)。
搭載されるのはキャリバー240です。
- 直径27.5mm・厚さ2.53mm(公式の技術仕様・2026年9月20日確認)
- 152部品・27石
- パワーリザーブは最低48時間・毎時21,600振動(3Hz)
- 巻き上げは22Kゴールドのオフセンター・ミニローター
22Kゴールド製のミニローターには「50 1976 – 2026」が刻まれ、シースルーバックから見えますよ。
50周年モデルは定価で買えるのか
新規の顧客が50周年モデルを定価で入手できる可能性は、きわめて低いと考えるのが妥当です。
腕時計3型の合計5,000本に対して、世界中の既存優良顧客からの需要が集中します。通常の現行モデルですら新規への案内が難しい状況で、記念モデルの配分が回ってくるのは考えにくい。
現実的には二次流通が主な入手経路になります。ただしそこでは、ノーチラス全体で定価の2倍から6倍という水準が待っています(2026年7月時点の中古相場)。
2026年6月7日からジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアムで50周年記念展示が始まり、2027年初頭まで続く予定です(公式の案内・2026年9月20日確認)。買うのは難しくても、現物を見に行くことはできます。
ノーチラス50年の系譜
ノーチラスの50年は、途切れずに人気が続いた歴史ではありません。大型モデルが一度消えた時期があります。意外ですよね。
後継の解釈をめぐって広く誤って説明されている部分もあるので、ここを正確に押さえておくと相場の見え方も変わってきますよ。
1976年|初代Ref.3700/1A「ジャンボ」
すべての始まりが、1976年のバーゼルフェアで発表されたRef.3700/1Aです。ケース径42mm、厚さ7.6mm。
ケースとベゼルが一体になったモノブロック構造を採用していました。今の2ピース構造とは別の作りです。
注意したいのは、この42mmが耳から耳で測った寸法だという点です。現在一般的な10時-4時方向の表記とは基準が違うので、後年のモデルと単純比較すると誤解を招きます。
ステンレス製でありながら当時の金無垢時計に匹敵する価格が付けられたことでも知られています。
- 1976年・バーゼルフェアで発表
- ケース径42mm(耳から耳)・厚さ7.6mm
- ケースとベゼルが一体のモノブロック構造
デザインを手がけたのはジェラルド・ジェンタで、1972年のロイヤルオークに続く一体型ブレスレットのラグジュアリースポーツウォッチでした。
「夕食の席で5分ほどでスケッチした」「客船の舷窓から着想を得た」という逸話はジェンタ本人が後年に語ったもので、一次資料で裏付けられているわけではありません。
3800は「後継」ではない
「3700の後を3800が継いだ」という説明を頻繁に見かけますが、これは正確ではありません。
3800は1981年に登場したミッドサイズの別ラインで、3700が生産されている間もずっと並行して展開されていました。
ケース径は37.5mm(耳から耳)、10時-4時方向では約35mm。自動巻キャリバー335 SCを積み、2006年まで生産されています。
同時期には1980年にレディースのクオーツ4700(27mm)、1981年にユニセックスのクオーツ3900(33mm)も加わりました。
- 3700:大型系・1976年から1990年まで
- 3800:ミッドサイズ系・1981年から2006年まで
- 4700・3900:クオーツの小径系・1980年代前半から
そして初代3700は1990年に生産終了しています。約14年の生産期間でした。
その後しばらく大型ノーチラスが不在の時期が続き、1990年代後半に3710が出て復活します。ずっと不動の人気だったというイメージは史実と違うわけですね。
5711から5811へ|なぜスチールではなかったのか
現在の人気を決定づけたのが、誕生30周年の2006年に登場した5711でした。ケース径は40mm(10時-4時方向)です。
そして2021年1月の廃番表明によって、ノーチラスの相場は決定的に変わることになりました。
後継として2022年10月に発表されたのが5811/1G-001です。ケース径41mm、厚さ8.2mm。
ケース構造が初代3700と同じ2ピース構造に戻った点が、5711との比較でいちばん語られる技術的な見どころになっています。
市場の多くがステンレスでの後継を予想するなか、パテック フィリップが選んだのはホワイトゴールドでした。
専門メディアは、同社がスチールモデルの生産比率を高めることに一貫して消極的である点を背景として指摘しています。先ほど見た年産約7万2000本という推計と合わせると、方針の一貫性が見えてきますね。
ノーチラスに関するよくある質問
ノーチラスは何年待てば案内されますか?
公表されている待機期間は存在しません。案内の可否は店舗ごとの裁量と入荷状況に左右されるため、「◯年待てば必ず案内される」という性質のものではありません。新規予約の受付自体を停止している店舗もあります。パテック フィリップも各正規販売店も、配分の方針を公表していません(2026年9月20日確認)。
いちばん定価が安いノーチラスはどれですか?
ステンレス35.2mmの7118/1A-001と7118/1A-011で、どちらも公式サイト表示価格は5,840,000円です(2026年9月20日確認)。文字盤の色が違うだけで金額は同じでした。ただし7118系は公式が婦人用として分類しているモデルなので、41mmクラスを想定している場合の実質的な下限は5811/1G-001の13,350,000円になります。
海外の正規店なら買えますか?
日本で買えないから海外で、という形では成立しにくいと考えてください。パテック フィリップは正規販売店の検索ページを国別に公開しており、渡航先の店舗を調べること自体はできます。ただし公式は、製品をすべて自社の販売ネットワークのみを通じて取り扱うと説明しているだけで、配分の方針は国を問わず公表していません(2026年9月20日確認)。持ち帰りには課税もあります。
海外で買った時計にはいくら税金がかかりますか?
税関によると、腕時計は関税が無税の品目なので、課税価格に対して消費税・地方消費税の合計10%がかかります。課税価格は海外の小売価格に0.6を掛けた額です。免税枠は「その他の品目」で海外市価の合計20万円までですが、1個で20万円を超える品物はその全額が課税対象になります。税関の計算例では、海外市価15万円の腕時計1個で8,900円でした(税関「税額の計算方法」・2026年9月20日確認)。
転売するとバレますか?
公式が制度として公表しているのは、保証書を再発行しないこと、ムーブメント番号とケース番号で個体を識別すること、ケースバックの取り外しは正規の窓口でのみ対応することです(2026年9月20日確認)。保証書の預かり期間や同一モデルの購入制限、販売記録の共有範囲は公表されていません。「バレる」という言い方は、二次流通に出た個体を書類と番号から追えるという業界慣行を指していることが多く、公表された制度の話ではありません。
50周年記念モデルはまだ買えますか?
腕時計3型の合計5,000本、デスククロック100本という限定数に対して需要が集中しており、正規店経由で新規顧客に配分される可能性は極めて低い状況です。入手を目指す場合、現実的には二次流通市場が主な経路になります。金額は5810G-001の12,210,000円から958G-001の41,720,000円までで、いずれも公式サイトの表示価格です(2026年9月20日確認)。
ノーチラスとアクアノートはどちらが買いやすいですか?
アクアノートのほうが相対的に入手しやすい状況です。中古相場の倍率はノーチラスの約2.2〜5.9倍に対し、アクアノート5167A-001が約3.1倍でした(2026年7月時点)。流通量も月3本程度と、年4本程度のノーチラス5811/1G-001より多くなっています。ただし絶対的な難易度はどちらも高い水準です。
今から定価購入を目指すのは現実的ですか?
ノーチラスを最初の1本として定価購入するのは現実的ではありません。一方で、カラトラバなどから購入履歴を積み上げる長期戦であれば、可能性はゼロではありません。ただし公式サイト表示価格で見ると5811/1G-001の定価は2024年3月の10,570,000円から2026年9月の13,350,000円へ約26%上がっており、待機期間中に目標金額も上がり続ける点は織り込んでおく必要があります。
まとめ
- 現行ノーチラスの定価は584万円から2,898万円(宝飾仕様を除く・公式サイト表示価格・2026年9月20日確認)
- いちばん定価が低いのは7118/1A-001と7118/1A-011の584万円。ただし公式は婦人用として分類している
- 公式の一覧には44リファレンスが並び、5990/1A-011も5726A-001も現行。トップページに出ないことと廃番は別の話
- 買えない理由は年産約7万2000本という母数、5711の廃番、中古相場の前年比約40%上昇、そして50周年の需要集中
- 入手経路は国内正規店・海外正規店・並行輸入や中古の3つ。二次流通は定価の約2.2〜5.9倍
- 海外で買って持ち帰る場合、腕時計は課税価格(海外市価×0.6)に対して消費税・地方消費税10%(税関・2026年9月20日確認)
- 公式が明言しているのは保証書の再発行不可・番号による個体識別・ケースバックの取り外し制限。購入制限や保証書の預かり運用は非公表
- 50周年記念モデルは腕時計3型5,000本+デスククロック100本。価格は1,221万円から4,172万円(公式サイト表示価格)
上で見たとおり、ノーチラスを定価で買うという目標は単独では達成できません。近道はありません。
カラトラバなど入手可能なモデルから関係を築く長期戦か、二次流通でプレミアムを受け入れるか。現実的な選択肢はこの二つに絞られます。
2024年登場の新コレクションが気になる方はキュビタスが買えない理由も参考になりますよ。
定価はパテック フィリップ公式サイトの日本向け表示価格(2026年9月20日確認)、中古相場は2026年7月時点の二次流通市場のデータです。年間生産数はモルガン・スタンレーおよびLuxeConsultによる推計値で、公式発表ではありません。価格は改定・市況により変動します。最新の情報は正規店および各販売店にてご確認ください。
高級時計全体の資産価値の考え方については、高級時計は資産になる?値上がりするモデルと定価割れの実態で、定価を上回るモデルと定価割れするモデルの違いを解説しています。